氏政クリーニング トップ > 05 クレーム対応(注意すべき点と事例)
ドライクリーニング・初めてのクレーム
全国クリーニング生活衛生同業組合から、クリーニングクレームガイドというクリーニング処理により発生した事故品の写真と事故の原因を説明した書籍が発刊されています。
私は、このクリーニング業界に入って早30年になりますが、一番最初に買った書籍がこのクリーニグクレームガイドという書籍です。
現会長である私の父が営んでいた時は外注していたドライクリーニングを、私は自社処理に切り替えました。未経験の世界、何も分からないクリーニング業界だけに、当時はこの書籍のみが頼りでした。ここに記載されている事故品さえ理解すればクレームは避けられると思いこんでいました。そのため必死に覚え込みました。
しかし、石油系のドライクリーニング機を導入してわずか1カ月も経たないうちに、この業界に入って最初の大きな事故をやってしまいました。
お客様からオーバーコートをお預かりしました。まったく普通の綿100%素材のオーバーコートでしたので、通常通り点検の後、なんのためらいもなく石油系ドライクリーニングをしました。
乾燥処理後に取り出してみてビックリです。衿と左右のポケット口が黒ずんでいます。
慌ててもう一度洗い直してみました。しかし、結果はまったく変わりません。
経験が無いため何が原因なのかサッパリ分からず、直ちにクリーニングクレームガイドを開けて調べました。その結果、これは衿とポケット口の生地に縫い込まれた接着芯の糊(接着剤)がドライクリーニングで溶け出してきたためであると分かりました。
ここからが、お客様とのクレーム対応となります。クリーニングクレームガイドにもお客様との対応のしかたや説明のしかたは、記載されていません。どうしたらいいか分からないため、お客様にこのクリーニングクレームガイドの接着芯の溶出のページを開けてお見せすることにしました。
お客様からお預かりしたコートは、この本に記載されているこの事故に遭遇してしまいました。申し訳ありません。
お客様から出た言葉は、「それで、、、」「どうしてくれるの、、、?」私もどうしたらいいのか分かりません。結局。お客様の言いなりに弁償するしかありませんでした。金額は、忘れてしまいましたが購入された価格を弁償しました。
クリーニングによる事故品を載せた本を見ていくら勉強しても、事故は避けられるものではない、いくらこちらが気をつけていても起きる交通事故と同じようなものという気がしました。
大事なことは、事故後の対応をいかにスピーディーに行うか、お客様にいかに納得してもらうのか(洗う前の点検で避けることが出来ない事故であることを)、その結果、こちらが希望する補償内容とお客様が要求する補償内容との妥協点(すり合わせ)の交渉となります。
最終的には、お客様との信頼関係をより深めて再来店していただける顧客としなければいけません。ここでの一番の失敗は、何分私にも経験がないため、焦ってお客様の言いなりになったことです。これでは、お客様との信頼関係を築くことは難しいです。
※余談ですが、「クリーニングクレームガイド」は昭和52年第2版として発行された書籍ですが、いまだに社内で活用されています。