氏政クリーニング トップ > 06 着物のお手入れと着物私考
4,着物地の黄変(カビ)と着物地に加工された糊と湯通しの関係
着物を着ようとしたらカビが、、、!なんて経験はありませんか?
着物のカビの一番の原因は、“湯通し”の際に洗い流すはずの糊や油成分などがきちんと洗い流されておらず、着物に付着したままの状態にあった為、カビが発生したと考えられます。 決して、消費者の保管の仕方に原因があるものではありません。
【湯通し】
湯通しは、着物の将来に大変重要な工程です。
湯通しとは、染めや織りが完成したものを水または湯の中に入れて、それまでの色々な工程で使われた糊、油成分、繊維に染着されていない余分な染料を綺麗に洗い流し出す作業です。
かつては、京都の風物詩といわれた加茂川、桂川の友禅流しとして表現されていました。
(現在は、河川の水質汚染、環境問題に関する規制があるため行われていません。)
昨今は、ポリ容器に水を張って着物地を手洗いするようになりました。
友禅染湯通し しぼり染めの湯通し 黄八丈の湯通し
工場内にステンレス槽を設置して洗い流すところもあります。
【湯通ししてから反物になるまでの行程】
①湯通しした着物は、自然乾燥します。
②湯のしをします。
テンターという熱したローラーと高温の蒸気で、生地を蒸らしながら反物の巾・長さを整えます。
③アイロンによる手直しをします。
④仕立て前の反物になります。
湯通しは、反物から着物になるための大事な儀式であり、着物の成人式と考えて良いものです。 “湯通し”から反物になるまでには、上の写真で分かる通り多くの行程があります。
特に、大島紬、結城紬等の先染めの着物地は、織る工程で糸の摩擦や毛羽立ちを防ぐために糊や潤滑油の油成分が多量に加工されています。しかし、これらは織り上がるまでは糸を守るために重要ですが、織り上がってしまえば全く必要がありません。
“先染め”とは、糸の状態で先に染めてから、反物に織り上げた着物→織りの着物
結城紬、大島紬、黄八丈など
“後染め”とは、生糸を反物(布)に織り上げた後、染めた着物→染めの着物
留袖・訪問着など礼装着物の多くは後染めです。
それどころか、湯通しをせずに着物を仕立てると水が付いただけでもシミになり、そのシミを落とせば、さらに際づき(輪ジミ)ができるのです。なかには、生地に染着されていない染料が流れ出したり、湿気が多いとカビが生えたり、シワが出来易く戻らない(いわゆる折れジワ)、着ては着心地がよくない(ごわごわ感があり肌触りが悪い)。湯通しをしてない着物は良いことは一つもありません。
しかし、格安販売の着物の中には、こうした湯通しをしてない着物が、数多く売られているのは事実です。
この理由の一つに着物地はめかた(重さ)で販売されるため、糊で増量している場合があるのです。販売価格を上げるために、着物作りの最も重要な湯通しを故意に省くことはなんとも許し難い事実です。
但し、西陣の綴れの帯、金糸・銀糸を織り込んだ帯、佐賀錦等始めから湯通しできないものもかなりあります。そのほか、絞りのあまい物、濃い色で染めてある物、刺繍のある物等も湯通しはできません。
湯通しをしなければならないのは紬類(先染め)に限るものではありません。湯通し可能な後染め着物にもかかわらず、現実には湯通しの工程が省かれている場合があります。ドライクリーニングによる丸洗い処理の工程(溶剤に水分が含まれていた場合に、色泣き、移染が発生します。)やシミ抜きでの水性処理の工程で染料が流れ出すことは、よくあります。
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